ernest-ansermet
アンセルメは表立っては語られないけど、そこは体制から睨まれないように巧みに、ナチス・ドイツから逃げる演奏家や指揮者を、人脈を使って逃がすのを手伝っている。ドイツの巨匠たちのように艶のある響きではないのは、数学者たる姿勢でベートーヴェンなどでスコアと異なる音を求めているところ。フランス音楽だと「感覚的」ということで許されるところ。
数学の答えは唯一つ。その答えを立証するために数学者は公式を考えだすことに人生を費やします。アンセルメは独自のスコアを常に使い、作曲家が出版したスコアとは違う演奏をしている。その数学者たる姿勢が素晴らしいのだ。
そして、ジュネーヴのビクトリア・ホールの固有の響きがまた、レコードとしては個性になっているんです。続きを読む